今回は、熱中症対策の業種別の対策ポイントを解説します。この記事で下記のことがわかります。
- 建設業における熱中症対策のポイント
- 製造業における熱中症対策のポイント
- 農業(屋外・ビニールハウス内)における熱中症対策のポイント
- 運送・物流における熱中症対策のポイント
- サービス業(小売店・飲食店など)における熱中症対策のポイント
目次
建設業における熱中症対策のポイント
建設現場は夏場の高温環境に加え、アスファルトや鉄骨からの輻射熱、重機の稼働による排熱など、多様な暑熱要因が重なります。特に高所作業では、熱中症による意識障害が墜落事故につながる危険があり、迅速な体調確認が不可欠です。
対策ポイント
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WBGT値を基準にした作業時間の制限
→ 「WBGT28度以上で30分作業ごとに10分休憩」と具体化できる。 -
ヘルメット内ファンや空調服の活用
→ 高所や直射日光下で体温上昇を抑制できる。 -
作業前の点呼・健康チェック(血圧測定や体調申告)
→ 毎朝の点呼で体調異常を事前に把握できる。 -
元請・下請を含めた報告体制の統一
→ 「班長→現場責任者→救護担当」と経路を明示できる。
製造業(工場内作業)における熱中症対策のポイント
工場では外気温に加えて炉や機械の稼働による熱がこもり、屋内でも熱中症のリスクが高いです。特に換気が不十分な施設では、湿度上昇による発汗困難が起こりやすい環境となります。
対策ポイント
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空調・換気設備の強化(スポットクーラーや大型扇風機)
→ 熱源から離れた冷気の通路を作ると効果的。 -
作業交代制を導入し、連続作業を防止
→ 2時間ごとに交代すると疲労蓄積を軽減。 -
冷却ベストや休憩室でのクールダウン
→ 冷水タオルや氷のうを常備すると体温を素早く下げられる。 -
作業員が「言い出しやすい雰囲気」をつくる教育
→ 「体調不良申告=責任」ではなく「安全行動」と伝える。
農業(屋外・ビニールハウス)における熱中症対策のポイント
農作業は季節を問わず熱中症事故が発生しており、特にビニールハウスは外気よりも10℃以上高温になることもあります。春先や秋口の「油断しやすい時期」にもリスクがある点が特徴です。
対策ポイント
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WBGT値を測定し、作業時間をこまめに区切る
→ 「午前は30分作業→10分休憩」など運用可能。 -
外国人技能実習生への多言語マニュアル配布
→ ベトナム語・中国語版で理解度を高められる。 -
水分補給を「塩分入り飲料」で実施
→ 経口補水液やスポーツドリンクを常備する。 -
適切な衣服(吸汗速乾・通気性のある素材)の導入
→ 綿よりもポリエステル混紡素材が体感温度を下げる。
運輸・物流業における熱中症対策のポイント
トラックドライバーや倉庫作業員は、車内の高温環境や積み込み作業時の体力消耗がリスク要因です。特にアイドリング制限がある場合、冷房を使えず体調悪化につながることもあります。
対策ポイント
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荷待ち・休憩時に利用できる涼しい休憩所の確保
→ 物流センターに冷房完備休憩所を設置する。 -
水分・塩分を常備できるよう会社側で配布
→ 車両にペットボトル飲料や塩タブレットを常備。 -
長距離ドライバーへの運行前点検と体調チェック
→ 出発前に体温・血圧を測定し、異常を早期発見。 -
倉庫での大型扇風機・ミスト機の導入
→ 積み下ろし場で空気循環を促し冷却効果を高める。
サービス業(小売・飲食など)における熱中症対策のポイント
冷房の効いた室内でも、厨房や焼き場などでは高温環境が発生します。また接客業は休憩を取りづらい職場環境のため、体調悪化を報告しにくい傾向があります。
対策ポイント
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厨房の換気扇・冷却設備の強化
→ 調理台近くにスポットクーラーを設置する。 -
休憩シフトを確実に回す仕組みづくり
→ 「1時間ごとに小休憩」をルール化して運用。 -
学生アルバイトやパートにも分かりやすい教育資料を用意
→ イラスト入りマニュアルや動画教材で理解度を高める。 -
体調不良の「申告しやすい制度」を整備
→ 「申告してもシフト削減しない」と保証する。
業種別 熱中症対策チェックリスト
建設業
☑ WBGT値で作業制限ルールを決めているか
☑ 空調服やヘルメットファンを支給しているか
☑ 作業前に健康チェックを実施しているか
☑ 元請・下請を含めた報告体制が明確か
製造業
☑ 熱源近くにスポットクーラーを設置しているか
☑ 作業交代制を取り入れているか
☑ 冷却用品・冷却休憩スペースを用意しているか
☑ 「体調不良を言いやすい雰囲気」を作れているか
農業
☑ WBGT計を設置し数値で判断しているか
☑ 多言語マニュアルを整備しているか
☑ 塩分入り飲料を常備しているか
☑ 通気性の高い衣服を導入しているか
運輸・物流業
☑ 涼しい休憩所を確保しているか
☑ 車両に水分・塩分補給物を備えているか
☑ 出発前に体調チェックを行っているか
☑ 倉庫に大型扇風機やミスト機を導入しているか
サービス業
☑ 厨房にスポットクーラーを設置しているか
☑ 休憩シフトを確実に回しているか
☑ 教育資料をアルバイトにも理解できる形にしているか
☑ 体調不良を安心して申告できる制度があるか